celestial





何が真実か、何が幻かなんて、誰にも分からない。
きっと、信じる事そのものが、僕の目に映る真実なんだ。






celestial

 


なんて綺麗な錯覚なんだろう。生田は最初、そう思った。
けれど、懸命に目を擦っても、瞬きをしてみても、それが消える事はなかった。更に言うならば、幻だと思い込むには、少々…いや、かなりはっきりし過ぎている光景だった。強烈に似合い過ぎても、いた。
あぁ、なんの話だって?
……言ったって、こんなのきっと、誰も信じやしないよ。僕の頭が可笑しくなったって、騒ぐだけ。
と、心の中で生田は、今日もこっそりと溜息を吐く。
俺の言う事、信じます?
風間。そう、皆さんご存知のあの風間さんですよ。彼の背中には、キラキラと光を零す真っ白な羽根が生えてるんだよ。嗚呼、その様子はさながら、天使の翼かと見紛うほどです。こんなに陳腐で使い古された表現で、非常に申し訳ないと思うのですが。
兎にも角にも、少なくとも生田の目にはそうなのだ。抽象的な意味ではなく、初めて出会った時から変わらずに、今もその翼は鮮やかに見えている。
そして、ここが肝心。
風間の羽根の存在を、生田以外の誰も知らない。多分。





next