celestial

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その日の夜。ひとつベッドで眠る、前にした話。
つまり、風間にも羽根の自覚はあったそうだ。ただ、どうしてこんなものがあるのか、全く分からない。
「無難に考えるときっと、突然変異ってやつだな。」
風間は少し笑ってみせると、そう言った。
小さな頃はそれを言っても相手にされず、空想だとか冗談で片付けられていたらしい。なので、だんだんと口に出さず、自分の中にそっと押し込めるようになった。自分にしか見えないものを説明しても、所詮、自分にしか分からないのだから。ひとりにしか見えないものは、他の大勢の現実にはなり得ない。
「まさか、見える人に巡り会うとは思わなかった。しかもそれが、よりによって斗真だなんてさ、」
「なんだよそれ、俺じゃ駄目なのかよ! 馬鹿にしてる!」
むくれると、風間は違うよ、と笑った。
「斗真の目は大きくて澄んでて綺麗だから、みんなには見えないものでも、ちゃんと見えてくれるのかもしれないな。」
「え………、」
「ありがとう。」
風間は、微笑んだ。ありがとう、見つけてくれて。

 



それ以来、風間と山下と生田に妙な距離感はなくなり、三人の間に流れる空気は、傍目にも穏やかだ。
生田がはしゃいで風間にじゃれつくのを当の風間は邪険に扱い、たまに押し切られ、それを山下は呆れたように眺めている。普段と変わらないけれど、三人ともがどこか楽しそうで。
風間がどう言って山下との関係を清算したのか、生田は全く知らされていないし、自分からは聞くつもりもない。
ただ、山下からはある日、ごめんと謝られた。いつもは感情を表に出さない山下が、やたらと申し訳なさそうな顔をしているのを見て、生田のわだかまりはきれいさっぱりかき消えてしまった。単純かもしれない。けれど、今が幸せだからそれでいいと、素直に思えたのかもしれない。

 



今日も風間の背中で羽根は輝き、生田はそれを眺めている。
あなたには、偶然それが見えないだけ。




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これはまだ、山下さんがにゅうすじゃなかった頃のお話ですね。所謂文具券トリオ。
当時の後書(2004年のお正月でした)には、
「生田さんがじたばたした感じ、風間さんは俯瞰の感じ、山下さんは雰囲気の人」
というような事が書いてあり、…どうでしょう?
あ、風間さんの翼はオーロラ状というか光の集合体のような素材で、服を着ても突き抜けてます。蛇足蛇足。






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