ピアスの理由。
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ピアスの理由。
亀梨が、ピアス穴をあけた。左耳。痛いの苦手な癖に、なんでだろ。
気になって尋ねてみようと思ったのに、「ねぇ、」って近付く度にひらりとかわされる。赤西とじゃれたり、聖にもたれたり、上田にまとわりついたり、中丸をからかったりしてるのに、俺の事だけは完全にスルー。
………避けられてる、よな? 俺、なんかしたっけ。
それでも笑顔を絶やさないまま、頭の中はぐるぐる。機嫌、悪くなるような事、何もしてないし、それに機嫌が悪いっていう感じじゃないんだよな。楽しい悪戯思いついた子供みたい。
その証拠に、スルーされてても無視されてる訳じゃない。俺の相手してくれないのに、気がついたら俺を見てたり。なーにって首を傾げると、ちょっと企み顔で笑ってからわざとらしく視線を外す。かと思うと、俺の視界にわざわざ入ってきて、髪を弄くりながら耳を見せて、ちらりと視線を送ってきたり。
気紛れなちょうちょみたいに、ひらひら、ひらひら。そんな事が今日、数え切れないくらい。
なんなんだろう。ピアスの理由、知りたいのにな。
なーんてうずうずと考えてたら、帰り際。
「明日、休みじゃん? うち、泊まりにくれば。」
帰り仕度の最中に、あっけらかんとお誘いされた。
基本的に、亀梨に誘われたら断らない。言われるがままについてきた、亀梨の部屋。
帰り道、一方的な他愛ない雑談に乗っけられて、結局ピアスの事は聞けずじまい。どこまでもはぐらかせるつもりなのかなって思ってたら、
「な、どー思う?」
部屋について落ち着いた途端、耳を見せて笑う。何、今までのタメってなんだったの?
「って言うか、なんで今日一日、この話題に触れさせてくれなかったの。散々もったいぶっちゃって、理由、あるの?」
「べっつに。こんだけ焦らせば、嫌でも気になるだろ。」
なんだよそれ。なんかタネがあるのかと思った。満足そうににこにこしてる亀梨を見てると、こっちまでつられて笑っちゃう。
「で、見ろよ。触ってもいーし、ほら。」
「あー、うん…いてててて、」
髪をくしゃりと掴まれて、耳の傍に無理矢理目を近づけさせられる。もう、強引なんだから。
お言葉に甘えてじっくりと観察してみると…やっぱり、ちょっと痛々しい。だって、ピアス穴って要するに、傷でしょ。薄い耳朶、赤くしちゃって。柔らかな耳朶に金属が強引に突き刺さってるっていう印象で、指先を触れさせるのも躊躇うくらい。
けど、似合ってるのも事実。ピアス、似合うんだなー、お洒落さんだもんな。…俺には、多分、似合わない。
「どう、感想は?」
「うん、似合うよ。いいんじゃないの?」
思ったままに答えると、亀梨はなんでか不満そうにため息ついた。俺の髪を掴んでた手を離して、そのままぺしってはたいてくる。
「いて。何すんだよー。」
「なんか普通過ぎ、つまんない。他にないのかよ。」
「他にって……。」
亀梨の求めてる返事、他にあるみたい。困ってへらりと笑うと、亀梨は何故か顔を赤くして、またも俺の頭を叩いた。
「痛いってば、バカになっちゃうんだけど!」
「うっせ。俺一人で、バカみたいじゃんか!」
………えーと、話が噛み合ってない、よな?
「田口のために、せっかく耳おしゃれにしよーと思ったのにさ!」
俺のため?
「耳が好きだとか行ってたから。気にしてみたのに!」
俺が、言ったから?
言われてみれば、確かに、そんな話をした。好きな相手のどういうところに魅力を感じるか、みたいな。俺、実は耳には結構色気を感じる人で、所謂耳フェチってやつかもしれない、って。それを聞いて亀梨は、へんたいーなんて笑いながらも、自分の耳を弄ってたっけ。
「あー………。」
ありがたいというか、ちょっと恥ずかしいというか。俺のために、自分の姿形を気にしてくれるって…クる。
「すいませんね、気が付かなくて。」
「ほんっとにな! ばーかばーか! 鈍感!」
「はい、バカで鈍感でした。」
「分かってるなら。罰ゲームな?」
………はい? 何やらされるんだろ。亀梨の罰ゲームはいつも、容赦ないからなぁ、怖いんだけどな。でも、逆らうともっと怖い。
「俺にできる事にしてくれる?」
「じゃあー、俺の耳、毎日消毒しろ。」
それは、罰ゲームというか…自分でやるのがめんどくさいだけなんじゃ。なんて、言わない言わない。
「いいよ?」
「それから、穴が完成したら、新しいピアス買え。」
「…分かりました。」
「あ、俺、肌弱いからさ。安物は絶っ対に合わないから、その辺ヨロシク。」
「……それは、確かに罰ゲームだ。」
こっそり呟くと、文句あんのか? って軽ーく殴られた。それから笑って俺の耳に唇を寄せて、小さく教えてくれた。
「ピアスあけると、耳、すっげー敏感になるんだって。田口以外の奴には触らせないから。」
………俺、かなりの幸せものかも。
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