ギヤマン細工師と僕





いつしか、時は過ぎてゆきました。
この町で一番の腕前になって修行の旅から帰ってきた若いギヤマン細工師と、この町で一番聡明で澄んだこころをもつ教会のオルガン弾きは、神様と、誰よりもふたりのことを分かって下さる牧師さまの前で、永遠を共にする誓いを立てました。
何故、できそこないのギヤマン細工に涙がたまっていったのか、それは今も、誰にも分かりません。けれど、その不思議なギヤマンは、この教会で今も見ることができます。ふたりの間に起こった、奇蹟の証として。
それからというもの、この町のとある工房で作られたギヤマン細工は、運命の相手と引き会わせてくれる力を持ち、ギヤマンによって出会った相手とは、共に幸せになれるという不思議な噂が、遠い遠い国まで流れました。
そしてその噂は物語になり、人から人へ、時代から時代へと、語り継がれていきました。





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