cheeky
みなとみらいが好きだという赤西に付き合って、助手席に乗っかっていた亀梨だが、疲労と気が抜けたのとで、いつの間にか眠ってしまっていた。
「カーメ。起きろよー、明日まで寝てるつもりかよー。」
「……んん。眠い。どこ、ここ。」
そこは何故か、夜景の見える部屋だった。意識が落ちる前は赤西の車のシートにいた筈なのに、亀梨の体は今、ふかふかのベッドの上だ。寝惚けているのかと慌てて体を起こすが、
「は?なんでベッド???」
「帰んのめんどくさいし、部屋とった。ほら、見ろよ。夜景、ちょーキレイだし!」
「ていうか、俺、どうやってここまで来た?」
「ちゃんと歩いてたけど。お姫様だっこって訳にいかねーし。」
すげーぐにゃぐにゃしてたけどな。そう言って赤西は笑った。
「てゆうか…なんで?」
「いーじゃんたまには。のんびり泊まってこーぜ?」
「つーか、明日も舞台…」
「いんだよ、ドーハンシュッキンで!」
断言すると亀梨は、意味分かって言ってんの?と笑った。
ルームサービスで食事をとって、窓辺で食べた。軽く、スープやホットサンドにパスタ、それにフルーツの盛り合わせ。夜景が本当にきれいで、そっちにかまけてなかなか食が進まない亀梨に、
「ちゃんと食えよ、ほらー。」
と、赤西はあーん、と言いながら食べさせる。
「うっわ、仁恥ずかしー。」
「うっせ!たまにはいーじゃんかよー。」
「いーやーだー、」
「もー、いいから食えって!」
隣にわざわざ移動してきて互いに食べさせ合ったり、ついでにキスもし合ったりして、笑い合って。
「そうだ。今日は、なんでもわがまま聞いてやろっか。」
「へ?」
突然の赤西の提案に、亀梨は口にメロンをくわえたままできょとんと相手を見つめた。いきなり何を言い出すんだ?
「何、なんで。いきなり過ぎ。」
「だから、たまにはいーじゃんって。」
と、亀梨の口から覗くメロンを一口、噛み取った。途端に亀梨の顔が、ふにゃりと解ける。照れ屋故に素直になれなかったりもするけれど、直接的な愛情表現が、亀梨は好きだ。
「一緒に風呂入って、フルーツの続き食おっか。」
「うん、入る。」
カットフルーツが盛られたガラスの皿を胸に抱えて、誘われるままにバスルームに向かう。互いに服を脱がせ合って、空のバスタブに入り込む。広々としたバスタブは、二人で入ってもまだ人が入れそうなくらいに余裕があった。
備え付けのバスバブルを入れて、泡を立てながら湯をためる。
「これ以上深くするとあわあわでこれ、食えない。」
と、亀梨はフルーツの器を庇いながら、腰辺りまで水位が上がったところで湯を止めた。
「食欲、出てきたみたいじゃん?」
「うん。仁のおかげー。」
甘えるように笑って、イチゴを口にくわえると赤西に顔を近付ける。互いの唇で潰すように、キスをした。そのままゆっくりと抱き締め合って、体の輪郭を確かめる。
細くなったなー…と、赤西は思う。舞台やコンサートがある度に、亀梨の体の肉は削がれるように落ちる。食べられないんだから仕方ないと本人は笑うけれど、自分の食欲と体を分けてやりたいと、赤西は本気で思うのだ。
やけにくっきりとした背骨に指を這わせると、亀梨の体はギクリと震えた。
「じ、ん……、」
少し潤んだ目で、赤西をじっと見つめる。
体が疲れている時ほど、かえって性欲は増したりする。種の保存の本能なのか。赤西にはそんな難しい事は分からないし興味もない。ただ、分かるのは、
「………気持ちくしてやるからさ、じっとしてな。」
亀梨が今、自分を求めているという事。
「えー…でも、」
「いーの。甘やかしてやるっつっただろ。ワガママ言えって。」
言いながら、向かい合わせになっていた亀梨の体を反転させ、後ろから抱き寄せると、湯面にふわふわと湧き上がっている泡を両手で掬い取っては抱き込めた体にゆっくりと塗り始めた。
手が動く度に少しずつ、亀梨の肌が赤みを帯び、息がゆるゆると上がっていく。一息あがる毎に紅に染まっていく肌。赤西の塗る泡がそれを覆い、亀梨はすっかり白に包まれた。
「……なんか、ソープごっこみてー。」
「黙ってろってば。これでも食ってろ。」
気恥ずかしさに零れた亀梨の言葉を遮るように、唇に噛み付く。抵抗する気配もなく舌を絡ませてくるのを受けて、赤西は泡に塗れた手をまっすぐに亀梨自身へと滑り下ろした。
「………ん。」
そこは全身を泡で包まれる刺激だけで既に十分に勃ち上がっていて、赤西は指を軽く添えると、ゆっくりと扱き始めた。最初は優しく、徐々にリズムを早くして、しっかりと。
指に追い詰められて少しずつ息を乱し、惚けたような表情になっていく亀梨を肩越しに眺めて、キレイだと、赤西は思った。
ステージの上に凛と立つ亀梨も、もちろん好きだ。けれど、何よりも好きで好きでたまらないのは、自分と二人でいる時だけに見せる、こんな顔。
甘やかしてやりたい。ワガママ、なんでも聞いてやりたい。
いつもはただ、求めてばかりで甘えてワガママ放題の自分だけれど。今日は、逆だ。限りなく優しくしてやりたい。
そんな赤西の気持ちに寄りかかるように、亀梨の息遣いが切迫してバスルームの中で反響する。もう、と唇が音なく動いて、首を激しく振った。
「いいよ、いっちゃえ?」
「う…や、ぁ!じ、ん……!!!」
甘く耳元で囁くと、それを待っていたかのように亀梨は呆気なく体を大きく震わせて、赤西の名前を呼んだ。
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